C.3.1 心筋梗塞後
急性心筋梗塞の入院中には、CCU でのベッド上安静から始め、座位、立位、歩行と負荷を少しずつ上げていく急性期離床プログラムが、日本で標準化されている。段階を上げるたびに同じ形式の負荷試験を行い、症状、心拍数、血圧、心電図の基準に合格すれば次の段階に進む。終章 8.4 で典型例として挙げたプロトコルである。退院後も続ける運動療法(回復期の心臓リハビリテーション)の効果は、付録B の B.1.5.1 にまとめた。
表 C-42 心筋梗塞後のプロトコル
| 区分 | 文献 | P(対象) | I(プロトコル・種類) | C | O・結果 | 結論 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| G | [1] 日本心臓リハビリテーション学会 2023 | 入院前の ADL が自立し、運動療法の禁忌がない急性冠症候群(対象者数の記載なし。アスリート:記載なし) | 急性期離床プログラム(Stage 0〜5 と心リハ室)。criteria-based | ― | プログラムの記述で、効果の数値はない | 記述のみ |
| G | [2] JCS/JACR 2021 | 急性冠症候群(対象者数の記載なし。アスリート:記載なし) | 臨床パス(10日・14日)による急性期の心臓リハビリテーション。混合(日程は目安で、進み具合で短縮・延長し、段階はステージアップ基準で上げる) | ― | 臨床パスを用いた急性期の心臓リハビリテーションを推奨(COR I、LOE A)。早期に再灌流が得られ、明らかな合併症のない患者には、CCU での早期離床を考慮すべき(COR IIa、LOE B) | 有効 |
急性冠症候群の急性期離床プログラム(日本心臓リハビリテーション学会 2023)
Section titled “急性冠症候群の急性期離床プログラム(日本心臓リハビリテーション学会 2023)”表 C-43 段階と移行基準(急性冠症候群の急性期離床プログラム)
| 段階 | 時期の目安 | 主な介入(ステージアップ負荷試験 → 合格後の安静度) | 次の段階に進む基準 |
|---|---|---|---|
| Stage 0 | 基準による | CCU でのベッド上安静、リスクの層別化 | 開始基準をすべて満たす:CK がピークを過ぎた、体位変換などで血圧が下がらない、安静時心拍数 120/分未満、38℃以上の発熱がなく炎症反応が改善傾向、心室不整脈の頻発がない、Hb 8 g/dL 以上または進行性の貧血がない |
| Stage 1 | 基準による | 能動的座位 → 端座位 | 合格基準(下記)を満たす |
| Stage 2 | 基準による | 立位・足踏み → ベッドサイドでの立位 | 合格基準を満たす |
| Stage 3 | 基準による | 10〜20 m 歩行 → トイレ歩行 | 合格基準を満たす |
| Stage 4 | 基準による | 病棟1周(100 m)→ 病棟内フリー | 合格基準を満たす |
| Stage 5 | 基準による | 病棟2周(200 m)→ 院内フリー | 合格基準を満たす |
| 心リハ室 | 基準による | 6分間歩行試験とフレイルの評価 | 6分間歩行で 300 m 以上歩ければ(目安)、運動プログラムを作って運動療法を始める |
ステージアップ負荷試験の合格基準は次の6つである。①負荷試験中に胸痛、呼吸困難、動悸がない。②負荷試験中の心拍数が 40〜120/分で安定している。③VT・VF などの危険な不整脈が出ない。④心電図で 1 mm 以上の虚血性 ST 低下、または著明な ST 上昇がない。⑤負荷試験後の収縮期血圧が 20 mmHg 以上下がらない。⑥負荷試験後の収縮期血圧が 30 mmHg 以上上がらない(Stage 2 までは 20 mmHg)。
PCI で TIMI 3 の血流が得られて残存狭窄がなく、max CPK 2,000 未満、Killip 分類 I〜II で人工呼吸器や補助循環を使っておらず、EF 40% 以上、心筋梗塞の既往がない場合は、同じ日に複数の段階を上げてよい。反対に、心破裂の危険が高い場合(心膜液の新たな出現や増加など)は、発症9日目まで Stage 2 以下にとどめ、10日目以降に Stage 4 に進む。この部分だけは時間による決まりである。
急性心筋梗塞の臨床パス(JCS/JACR 2021、国立循環器病研究センターの例)
Section titled “急性心筋梗塞の臨床パス(JCS/JACR 2021、国立循環器病研究センターの例)”表 C-44 段階と移行基準(急性心筋梗塞の臨床パス)
| 段階 | 時期の目安 | 主な介入 | 次の段階に進む基準 |
|---|---|---|---|
| ベッド上 | PCI の翌日(第1病日) | 止血具を外したあとはベッド上で自由 | CK またはトロポニンの最高値を確認してから心臓リハビリテーションを始める |
| 室内 | 第2病日以降 | 室内で自由 | 負荷試験に合格したらトイレ歩行を許可する |
| 病棟内歩行 | 10日パスまたは14日パスの日程に沿う | 病室から 200 m 以内の病棟内歩行(200 m を1日3回勧める) | 200 m を心筋虚血なく歩ければ持久力トレーニングに移る。亜最大負荷試験に合格したら入浴とリハビリテーション病棟内の歩行を自由にする |
| 退院 | 第10病日または第14病日 | 退院後の生活の注意点を説明し、外来の心臓リハビリテーションにつなぐ | ― |
各段階の負荷試験の基準は次の5つである。①胸痛、呼吸困難、動悸などの自覚症状がない。②心拍数が 120/分以上にならず、40/分以上増えない。③危険な不整脈が出ない。④1 mm 以上の虚血性 ST 低下、または著明な ST 上昇がない。⑤ポータブルトイレを許可されるまでは、収縮期血圧が 20 mmHg 以上変化しない(発症2週以降は血圧の基準を用いない)。不合格のときは薬物治療などを行い、翌日に同じ試験をやり直す。
- 日本心臓リハビリテーション学会 2021年度心臓リハビリテーション標準プログラム策定部会. (2023). 急性冠症候群の心臓リハビリテーション標準プログラム(2023年版). 日本心臓リハビリテーション学会. https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2023/02/ACS2023.pdf(2026 年 10 月 9 日閲覧)
- Makita, S., Yasu, T., Akashi, Y. J., Adachi, H., Izawa, H., Ishihara, S., Iso, Y., Ohuchi, H., Omiya, K., Ohya, Y., Okita, K., Kimura, Y., Koike, A., Kohzuki, M., Koba, S., Sata, M., Shimada, K., Shimokawa, T., Shiraishi, H., . . . Japanese Circulation Society/the Japanese Association of Cardiac Rehabilitation Joint Working Group. (2022). JCS/JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients With Cardiovascular Disease. Circulation Journal, 87(1), 155–235. https://doi.org/10.1253/circj.CJ-22-0234
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