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    C.2.3 前十字靱帯(ACL)再建術後

    ACL 再建術後は、criteria-based のプロトコルが最もよく整えられている領域である。終章 8.4 でスポーツリハビリテーションのプロトコルを典型例として挙げたのは、この領域を念頭に置いている。ただし、どのガイドラインも、段階を進める基準の数値は専門家の意見によるものであり、基準に合格すれば再受傷が減るという根拠はまだ一致していないと述べている。対象者は若いスポーツ参加者が中心で、最終段階を競技への復帰に置いている。

    表 C-18 ACL 再建術後のプロトコル

    区分 文献 P(対象・アスリートの別) I(プロトコル・種類) C O・結果 結論
    G [1] Aspetar 2023 ACL 再建術後(根拠とした 140 RCT の参加者は平均 27.9歳。アスリート:混在。競技復帰の基準はプロのアスリート向け) 基準で段階を進めるリハビリテーション。ランニングの開始と競技復帰に基準を示す。criteria-based(移植腱を守る最短期間に配慮する) ― 段階の進行と終了にどの基準を用いるべきかの根拠はないため、専門家の合意で基準を示した(ランニング開始の基準は合意 87.8%、競技復帰の基準は 88.8%) 記述のみ
    G [2] van Melick 2016 ACL 再建術後(90 研究に基づく。アスリート:混在) 術前期と、基準で進む3つの術後期(機能障害の改善、競技特異的な訓練、競技復帰)。混合(リハビリテーションは 9〜12か月続ける) ― 術後のリハビリテーションを 9〜12か月続ける。競技復帰は、筋力・ホップテストと動作の質を含むテストバッテリーで判断し、患健比(LSI)90% 超を目安、ピボット・接触のある競技では 100% を勧める(エビデンスレベル 2) 記述のみ
    Lv3 [3] Grindem 2016(Delaware-Oslo) ピボット動作のある競技に週2回以上参加していた ACL 再建術後(106名、平均 24.3歳。アスリート:該当) 競技復帰の基準(すべてのテストで 90 超)と、術後9か月以降の復帰。混合 基準に合格しないで復帰 基準に合格しないで復帰した55名の 38.2%、合格した人の 5.6% が再受傷した(HR 0.16、p=0.075、有意でない)。術後9か月まで、復帰を1か月遅らせるごとに再受傷が 51% 減った 有効(復帰の時期)/効果不明(基準)

    Aspetar のリハビリテーション(Kotsifaki 2023)

    Section titled “Aspetar のリハビリテーション(Kotsifaki 2023)”

    表 C-19 段階と移行基準(Aspetar の ACL 再建術後リハビリテーション)

    段階 時期の目安 主な介入 次の段階に進む基準
    早期 術後3日以内に開始 関節の可動域運動と荷重を含む早期の加速的リハビリテーション(単独の ACL 手術の場合。半月板・軟骨の合併損傷では術者の指示に合わせる) ―
    運転の再開 右側の手術で約4〜6週、左側で約2〜3週 ― 模擬の緊急時にブレーキを安全に踏める
    ランニングの開始 研究では多くが術後12週(8週・16週もある) 有酸素の適応が得られる量と強度のランニング 膝屈曲の可動域 95%、完全伸展、関節水腫がない(ごくわずか)、大腿四頭筋力の LSI 80% 超、カウンタームーブメントジャンプの遠心性インパルスの LSI 80% 超、痛みのない水中ジョギングと免荷トレッドミル走行、痛みのない片脚の反復ホップ
    競技復帰(チームでの練習を開始) 基準による クラブの練習に合流し、少しずつ完全な参加に戻る 痛みと腫脹がない、膝の完全な可動域、膝が安定している(ピボットシフト、ラックマン、機器による弛緩性の評価)、主観的な膝機能と心理的準備が正常化(IKDC、ACL-RSI、Tampa Scale)、60°/秒の等速性の大腿四頭筋・ハムストリングスのピークトルクが 100% 対称(高い要求のピボット競技)、カウンタームーブメントジャンプとドロップジャンプが 90% 超対称、反応筋力指数が両脚 1.3 超・片脚 0.5 超(フィールド競技)、跳躍と高速走行の生体力学の対称性、競技特異的な訓練プログラムの完了

    ランニングの開始の基準は、研究の結果がないなかで提案されたものである。

    オランダのガイドライン(van Melick 2016)

    Section titled “オランダのガイドライン(van Melick 2016)”

    表 C-20 段階と移行基準(van Melick 2016)

    段階 時期の目安 主な介入 次の段階に進む基準
    術前期 手術前 膝伸展の可動域と大腿四頭筋力を測り、改善する ―
    第1期(機能障害の改善) 術後1週から 正しい歩行パターンで、痛み・水腫・熱感が増えなければ即時荷重。大腿四頭筋の等尺性運動(1週)、閉鎖運動連鎖(2週)、開放運動連鎖は 90〜45° で4週から(ハムストリング腱では12週まで追加の負荷なし)、可動域を5週で 90〜30°、6週で 90〜20°、7週で 90〜10°、8週で全可動域に広げる。神経筋トレーニングを加える 前の段階の目標を達成し、客観的なテストで確かめる(数値の基準は原文の付録 2)
    第2期(競技特異的な訓練) 基準による 競技に特異的な訓練 同上
    第3期(競技復帰) 術後 9〜12か月まで続ける 競技への復帰 筋力とホップのテストバッテリーと動作の質の評価。LSI 90% 超を目安、ピボット・接触のある競技では 100%

    表 C-21 段階と移行基準(Delaware-Oslo の競技復帰の判断)

    段階 時期の目安 主な介入 次の段階に進む基準
    リハビリテーション 術後9か月まで ― 術後9か月が経過し、かつ次のすべてで 90 超:60°/秒の等速性大腿四頭筋力の LSI、4種のホップテスト(片脚幅跳び、クロスオーバー、3段跳び、6 m タイム)の LSI、KOS-ADLS、機能の全般的評価(GRS)
    競技復帰 9か月以降 競技に戻る ―
    1. Kotsifaki, R., Korakakis, V., King, E., Barbosa, O., Maree, D., Pantouveris, M., Bjerregaard, A., Luomajoki, J., Wilhelmsen, J., & Whiteley, R. (2023). Aspetar clinical practice guideline on rehabilitation after anterior cruciate ligament reconstruction. British Journal of Sports Medicine, 57(9), 500–514. https://doi.org/10.1136/bjsports-2022-106158
    2. van Melick, N., van Cingel, R. E. H., Brooijmans, F., Neeter, C., van Tienen, T., Hullegie, W., & Nijhuis-van der Sanden, M. W. G. (2016). Evidence-based clinical practice update: Practice guidelines for anterior cruciate ligament rehabilitation based on a systematic review and multidisciplinary consensus. British Journal of Sports Medicine, 50(24), 1506–1515. https://doi.org/10.1136/bjsports-2015-095898
    3. Grindem, H., Snyder-Mackler, L., Moksnes, H., Engebretsen, L., & Risberg, M. A. (2016). Simple decision rules can reduce reinjury risk by 84% after ACL reconstruction: The Delaware-Oslo ACL cohort study. British Journal of Sports Medicine, 50(13), 804–808. https://doi.org/10.1136/bjsports-2016-096031

    v0.1(テスト版)・2026-10-10 時点。誤りを見つけた方は報告のページからお知らせください。