C.2.8 その他の整形外科疾患
ここでは、ハムストリングの肉ばなれ、アキレス腱断裂、半月板縫合術後の3つを挙げる。ハムストリングの肉ばなれはスポーツ選手に多く、競技復帰までを criteria-based で進める合意がある。一方、アキレス腱断裂と半月板縫合術後では、早く荷重・運動させるプロトコルと、制限を長くかけるプロトコルを比べた RCT があり、いずれも差がなかった。手術を受けない保存治療のプロトコルも、段階の考え方は同じなので、ここに含めた。
表 C-38 その他の整形外科疾患のプロトコル
| 区分 | 文献 | P(対象・アスリートの別) | I(プロトコル・種類) | C | O・結果 | 結論 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| G | [1] London 合意 2023 | ハムストリングを損傷したスポーツ選手(専門家による修正デルファイ法。アスリート:該当) | 症状、筋力、それまでの負荷への反応を合わせて評価し、ランニング、スプリント、競技復帰と進める。criteria-based | ― | 痛みのないランニングをスプリント開始の基準とする(合意 85.5%)。痛みのないスプリント(96.7%)と制限のない練習の完遂(93.3%)を競技復帰の基準とする。可動域・筋力の数値の基準は合意に至らなかった | 記述のみ |
| Lv2 | [2] Costa 2020(UKSTAR) | 保存治療のアキレス腱断裂(540名、平均 48.7歳、男性 79%。アスリート:記載なし) | 機能的装具で直後から保護下に全荷重し、8週で足部を中間位に戻す。time-based | ギプス固定(8週で中間位に戻す) | 9か月後の ATRS に差はなかった(72.8 対 74.4、調整差 −1.38、95%CI −4.9〜2.1)。再断裂も差がなかった(5% 対 6%) | 無効(差なし) |
| Lv2 | [3] Lind 2013 | 関節包に近い縦断裂を all-inside 法で縫合した単独の半月板損傷(60名。アスリート:記載なし) | 2週の制限のあと、活動と可動域を自由にする。time-based | 6週の制限(ヒンジ装具、可動域を徐々に 90° まで、触れる程度の荷重) | 症状が続いた患者の再関節鏡で、部分治癒または治癒しなかったのは 28% と 36%(P=0.53)。KOOS と Tegner も差がなかった | 無効(差なし) |
ハムストリング肉ばなれのリハビリテーションと競技復帰(London 合意 2023)
Section titled “ハムストリング肉ばなれのリハビリテーションと競技復帰(London 合意 2023)”表 C-39 段階と移行基準(ハムストリング肉ばなれ)
| 段階 | 時期の目安 | 主な介入 | 次の段階に進む基準 |
|---|---|---|---|
| リハビリテーション | 基準による | 症状、筋力、それまでの負荷への反応を合わせて評価し、運動の量と強さを決める | ― |
| ランニング | 基準による | ランニングの量を少しずつ増やし、全力のスプリントに戻す | 痛みなく走れる |
| スプリント | 基準による | スプリントの量と強さを試合の水準に近づける | 痛みなくスプリントできる |
| 競技復帰 | 基準による | 競技に戻る | 痛みのないスプリント、制限のない練習を最後までこなす。本人の不安の有無と、運動連鎖の筋力・機能も考慮する |
可動域の許容差(以前の値の 10% 以内、なければ反対側の 20% 以内)は合意に至らなかった(45.0%)。合意の閾値は 70% とされた。
アキレス腱断裂の機能的装具(UKSTAR)
Section titled “アキレス腱断裂の機能的装具(UKSTAR)”表 C-40 段階と移行基準(アキレス腱断裂の機能的装具)
| 段階 | 時期の目安 | 主な介入 | 次の段階に進む基準 |
|---|---|---|---|
| 装具の装着 | 受傷後すぐ | 装具に踵の楔を2枚入れて足関節を重力による尖足位に保ち、保護下に全荷重する | 時間の経過 |
| 楔の除去 | 8週かけて | 楔の数を減らし、足部の位置を少しずつ戻す | 8週で足底が床につく中間位になる |
半月板縫合術後の制限しないリハビリテーション(Lind 2013)
Section titled “半月板縫合術後の制限しないリハビリテーション(Lind 2013)”表 C-41 段階と移行基準(半月板縫合術後)
| 段階 | 時期の目安 | 主な介入 | 次の段階に進む基準 |
|---|---|---|---|
| 制限期 | 術後2週まで | 可動域 0〜90°、装具なし、触れる程度の荷重 | 2週が経過したら |
| 自由 | 術後2週以降 | 活動と可動域を制限しない | ― |
この方法で縫合した単独の半月板損傷では、全体の約 30% が治癒しなかった。
- Paton, B. M., Read, P., van Dyk, N., Wilson, M. G., Pollock, N., Court, N., Giakoumis, M., Head, P., Kayani, B., Kelly, S., Kerkhoffs, G. M. M. J., Moore, J., Moriarty, P., Murphy, S., Plastow, R., Stirling, B., Tulloch, L., Wood, D., & Haddad, F. (2023). London International Consensus and Delphi study on hamstring injuries part 3: Rehabilitation, running and return to sport. British Journal of Sports Medicine, 57(5), 278–291. https://doi.org/10.1136/bjsports-2021-105384
- Costa, M. L., Achten, J., Marian, I. R., Dutton, S. J., Lamb, S. E., Ollivere, B., Maredza, M., Petrou, S., Kearney, R. S., & UKSTAR trial collaborators. (2020). Plaster cast versus functional brace for non-surgical treatment of Achilles tendon rupture (UKSTAR): A multicentre randomised controlled trial and economic evaluation. The Lancet, 395(10222), 441–448. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)32942-3
- Lind, M., Nielsen, T., Faunø, P., Lund, B., & Christiansen, S. E. (2013). Free rehabilitation is safe after isolated meniscus repair: A prospective randomized trial comparing free with restricted rehabilitation regimens. The American Journal of Sports Medicine, 41(12), 2753–2758. https://doi.org/10.1177/0363546513505079
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